不良とスケバン・3~スポーツ暴走族・マイティシックス

真木村に一大事発生!! 一人暴走族の手におちてしまった我らが美少女の運命やいかに!?
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森の中から現れた真木村の姿を見て仰天する一同。
はらりと垂れた前髪、しどけなく左右に揺れるスカート、そして、頬を伝って滴り落ちる涙・・・・
その様子から、彼女の身に起こったただならぬ事態を察知してしまうのであった。

 

しかし、この回は真木村受難の巻であった。
目の前にバイクが突っ込んできただけでも腰を抜かす所なのに、ひと気の無い森の中で、ならずものの男達に絡まれるなど彼女にとって人生最大の恐怖だったに違いない。
乱暴こそされなかったものの彼女の恐怖や不安は察するに余りあり、ひとり涙する様はまこと哀れで気の毒であった。

 

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今度は早川がピンチ!しかし機転を利かせた真木村のトスにこずえの『アターック!!』 で見事撃退! こずえのスパイクが使いようによっては恐るべき凶器になる事を証明したシーンでもある。 

 

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石松を6人がかりでフルボッコにした上、駆けつけた武市と真木村までなぶりものに。この極悪ぶり、なんたる非道。話を聞いたこずえは怒りに身を震わせるのであった。

 

奈良に旅行に来たこずえらにしつこく付き纏う不気味なバイク集団・マイティシックス。
一見ただのカミナリ族の彼らだが、実は女ボスのマヤを筆頭に全員がスポーツのスペシャリストであった。メンバーは以下の6人。

 

マヤ・・・マイティシックスのリーダー。女だてらに屈強な男どもを率いて『強い奴』に挑戦し続ける。バレー経験者らしいが、抜群の身体能力と格闘技術を誇り、バイクのテクニックでもメンバー中最高の腕を持つ。来歴ともに並の人間ではなさそうである。

 

谷・・・元テニスのチャンピオンでグラサンのヤサ男ふう。一見紳士的な物腰だが、やる事は十分ワル。メンバーの中ではマヤに次いで発言力があるらしい。

 

戸部・・・柔道4段。早川に急接近されてドギマギしていた。ガタイは凄いが性格はトロイようだ。

 

葉室・・・元サッカー選手でゴールキーパー。相手が女子でも情け容赦なく攻撃するなど、かなり凶悪。

 

田宮・・・アマレスで全日本王者を2度。太い枝も片手でへし折る怪力。

 

笠置・・・ボクサー志望。こいつだけ正式なスポーツの経験がない。だが元用心棒とかケンカ自慢のチンピラ上がりのような不敵なムードが漂っていた。
ちなみに笠置の声は第26~29話まで猪野熊を演じた中曽根雅夫。
中曽根雅夫はウルトラマンのあの「掛け声」を発明し、実際にそれを発していた本人である。
日本人なら知らぬ者はいない『シュワッチ!』の本家本元だった訳だが、その晩年はかなり不遇だったと聞く。すでに故人となって久しいが、スパイクを打つ掛け声にその片鱗がしのばれるだろう。

 

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度重なる挑発、暴力行為に業を煮やしたこずえはリーダーのマヤにマイティの付き纏い行為の停止と、彼らが引き起こした数々の乱暴狼藉の謝罪を要求。
激怒するマイティシックスメンバーだったが、マヤは条件付きでこずえの要求をのむと応える。
その条件とはバレーの試合でマイティシックスの挑戦を受ける事だった。

 

「そこに山があるから上る。そこに強い奴がいるから戦う。力の強い奴、大きな奴がいれば挑戦する、それがマイティシックスの掟だ! マイティシックスは高校日本一の富士見高女子バレー部に挑戦する!!」

 

こうしてマイティシックスと富士見軍団の他流試合ワンセット一本勝負の幕が切って落とされた。

 

マヤに案内された場所は無人の工場の一角にあるテストコース。
いつしか日はとっぷりと暮れ、コートの四隅のオートバイのライトによりコートが『照明』された。

 

「レッツゴー!マイティシーックス!!」

 

そこに現れた彼らの姿を見てこずえらは唖然とする。

 

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この試合、富士見にとっては完全アウェーである。
まず得体の知れぬ閉鎖された空間であるというのは相当のプレッシャーがある。
さらにマイティシックスの異様な姿が彼女達を威圧する。
各自それぞれのジャンルによる出で立ちだという理屈は分かるのだが、普通の女子高生が両膚見せた男達に挑みかかってこられたらビビリまくってしまうのは無理の無い事。
その上仲間のカミナリ族が観戦と称して乱入、コートの周りを爆音撒き散らしながら暴走する。
これでは完全アウェーどころの騒ぎではない。手こそ出さないものの、集中力を削ぐひどい妨害行為には違いないだろう。メンタルに左右されやすい富士見はすっかり萎縮してしまい、次々と得点を許してしまう。

 

そもそもマヤには富士見と対等な条件で戦う気などサラサラ無かった。
マヤにとっては富士見のインターハイ優勝などしょせんは学校の余暇活動、お嬢さん達のレクリエーションでしかない。そんなお遊びで『日本一』を名乗っていい気になってる連中を叩きのめし、「参りました」と、並んで土下座させる事が彼女の目的であったからだ。
事前に石松を痛めつけられたり猪股にケガを負わされた事で富士見には相当ハンデがあったが、マヤにその埋め合わせをして正々堂々と試合をするつもりなど微塵も無かった。マイティシックスはあくまでも不良集団であり、1対6のリンチまがいの暴力行為を恥とも卑怯とも思わないワルには違いなかったのである。

 

かさにかかって攻撃するマイティシックス。
男の力で思い切り叩き込むスパイクの威力は女子の比ではない。ましてや相手は腕自慢のならず者たち。
富士見にとって、下手をすれば大ケガもしかねない圧倒的な不利な戦いであった。

 

すっかり彼らのペースに呑まれ苦しい戦いを続けたこずえ達だったが、しかしそこは百選練磨、カミナリ族が去るとようやく本来の落ち着きを取り戻し始めた。
こずえが皆を集めて言う。

 

「相手の格好に惑わされないで。落ち着いて確実にポイントを取っていきましょう。」

 

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そう、しょせん富士見バレー部にとって彼らは素人集団でしかなかった。
力まかせで単調な攻撃は読まれ、逆に富士見の変幻自在な攻撃に振り回されるようになる。
そしていかに彼らが瞬間的なパワーで勝っていても、時には2時間以上にも及ぶ長丁場のフルセットを全力で戦えるこずえ達にスタミナで敵うはずがなかった。
ここが日常的に鍛錬を積んでいるチームと素人との決定的な違いだった。
こうしてジワジワと追いつめられた彼らは、やがて疲労で足元もおぼつかない状態となってしまう。

 

今が反撃のチャンス!

 

満を持して反撃の火蓋が切られた。
猛然と火を吐いたこずえのスパイクを皮切りに、半死の男どもに叩き込まれる富士見軍団のアタック・アタック・アタック!!
全員の体に叩き込まれた攻撃ルーチンが機械のように情け容赦なく無限反復される。そしてとうとうマイティの男たちはひっくり返ったまま起き上がれなくなってしまった。
富士見チームの鍛え抜かれた正統の技と力が、横紙破りのならず者達を完全に屈服させたのであった。

 

だらしなく膝をついてしまった男達の中で、ひとり前を見据えて立ちはだかるマヤ。チームとしての負けを悟ったマヤはこずえとのスパイク勝負に賭けた。こずえもそれを受けて立つ。
試合を通じ、マヤはこずえの実力と本物の根性を認め、好意と尊敬の念すら抱き始めていた。そして最後の瞬間、ケガを覚悟で体当たりでレシーブしたこずえの姿に、深い感動を覚えずにはいられなかった。

 

「キャプテン、これを。」

 

マヤはこずえを初めて「キャプテン」と呼び、自ら巻いていたマフラーを差し出した。
それはマヤがこずえに対して示した敬意と友情の証であった。

 

それが命がけの真の友情であった事は、次回『とばせマイティシックス』で証明されるのである・・・

 

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第79話「皮ジャンパーのマヤ」から始まるマイティシックス編は、長いアタックNo.1のエピソードの中でも特異なシリーズとなっている。
それまでも原作の大幅な改変はかなり行われていたが、登場人物を含め一から完全にアニメオリジナルのストーリーはマイティシックス編だけである。
これは脚本の準備段階で原作に追いついてしまったためだと思われるが、特訓、試合の連続でマンネリ化するのを回避する目的もあったのかも知れない。こうして視聴者は富士見チームと一緒に学校を飛び出し、奈良観光を楽しむこととなる。
なぜ奈良なのかと言えば、これは当時の国鉄が仕掛け社会現象となっていた『ディスカバー・ジャパン』ブームの影響であろう。
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美しい日本と私。ディスカバー・ジャパン

こずえ達がシブい神社仏閣や史跡、古道などををキャピキャピ言いながら巡るのはまさに当時のアンノン族の行動パターンそのものである。
さらにバイク、アクション、そしてセクシーな女番長まで登場させ、お父さん、お兄さんたちにも楽しんでいただこうという趣向だ。
じっさいマヤのパンチラのサービスシーンは2度ならずと拝む事ができるのだ。

 

ところで劇中、早川がマイティシックスを『カミナリ族』と呼んでいる。
今でいう『『暴走族』の事であるが、その昔は「サーキット族」「爆音族」「カミナリ族」などと呼ばれていた。
若者の暴走集団の全国規模の拡大は安価で高性能のバイク、特にナナハン(ホンダCB750)が登場しブームになってから一気に加速したといわれる。
それまでの大型バイクといえばハーレーは別格として英国車か国産のダブワン(カワサキ650W1)ぐらいだったが、高性能のスポーツモデルとなれば高価な英国製バイクに限られ、それを乗り回して遊べるのは金に余裕のあるボンボン連中だけであった。
また後の暴走族と比べれば「カミナリ族」は概して規模も小さく、年齢層も高め(主にプレス系やデリバリー系の職業少年たち〜鬼ハン、風防、カラスマスクなどはプレスライダーの装備)で活動も公道レースやツーリングなど走りがメインであった。
「カミナリ族」が「暴走族」と呼ばれるようになり、組織化・凶悪化して社会問題となったのは、ナナハンブーム以降の70年代中期である。

 

途中、マイティシックスが黄色いヘルメットの別の集団と遭遇するが、その時の様子もいたってのん気で友好的であった。この頃はまだグループ同士が抗争に明け暮れる暴力集団に変容する前の段階だったのである。
もちろんそうは言っても世間から眉をひそめられるアウトローな存在だった事には変わり無いが。

 

揃いのマシンにお揃いのライダースーツで統一し、純粋に遊び呆けている様子からマイティシックスのメンバーも貧困とは無縁の金持ちの子弟たちだったはずである。
金をもってこいと言ったのも、彼らにとってはこずえ達を呼び出す口実にすぎなかったのだろう。
こんなドラ息子たちの暇つぶしに付き合わされたこずえたちこそ、とんだ迷惑であった。

 

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マヤ・・・小原乃梨子
谷・・・井上真樹夫
戸部・・・島田彰
葉室・・・井上玄太郎
笠置・・・中曽根雅夫
田宮・・・朝倉宏二